「土用の丑の日はウナギ?」の理屈
「土用の丑の日にウナギを食すると夏バテしない」という理屈は、江戸時代に平賀源内が考案したとする言い伝えがありますが、果してそうなのでしょうか?《明和誌》によると、「近き頃、寒中丑の日にべにをはき、土用に入、丑の日にうなぎを食す、寒暑とも家毎になす。安永天明の頃よりはじまる。」と書かれています(安永天明の頃とは、1772年~1781年が安永、1781年~1789年が天明です)。《明和誌》は文政五年(1823年)に記されたものです。実は、現在、日本中の誰もが《明和誌》を根拠として平賀源内が考案したと言っていますが、私が調べる限り平賀源内の名は一切出てきません。平賀源内は1728年生まれの1780年没とされているので、時代としては合致しますが、この書の内容を忠実に解すれば通説の方が誤っていると言わざるを得ません。平賀源内は幼い頃に本草学(ほんぞうがく)や儒学を学んだとされますが、基本は蘭学者ですから、中国の暦学をどこまで知っていたかは不明です。総合的に考えて、平賀源内を考案者とするのは少々難がありそうです。ただ、どうして私がそこまで言い切れるのか?と言いますと、この「土用の丑の鰻」の発想には少々暦学と五行の知識が必要だからです。ちなみに土用の丑の日にウナギを食べる風習は中国にはありません。
土用の丑の日というのは日本人が勝手に作った迷信です。夏の土用は最も気温が高くなる大暑に近い頃で、暑く夏バテしがちです。月建では未月(土気)が相当します。そんな土の気が旺盛になる夏の土用の時節に、丑の日も五行で土の気を有するとなると、当然土の気は人にとって強すぎる力になります。そこで、この土気を抑えようとすると、土気を克す必要が出て来るのです。つまり、木の気です。この木の気は寅木、卯木が有する気で、特に卯木は強い木の気を有します。卯に関係する物が土の気を弱めるとなれば、「卯」⇒「う」という発想になったと考えられなくもありません。さらに言うと、木の気の本性は「曲直」です。曲がりくねったもの、細くて長いものが木の気をもつモノです。また、木気の味は酸です。「う」の発音を伴い長いモノだから、「ウナギ」、「うどん」、酸のモノだから「梅干し」になったと考えられます。これらを体内に取り込むことで、土の気を払おうと言う発想になったと考えてほぼ間違いないでしょう。これは、五行からの安易な発想による迷信です。そもそも、中国語で「卯」は「う」と発音しないので、日本人により勝手にこじつけられた五行の誤釈であることがわかります。さらに言うと、これを発想した人は易学がわからないまま使っていたであろうことが手に取るようにわかります。ですから、平賀源内氏の名誉のためにも、土用の丑の日にウナギを考案したのは、中途半端な力量の易者であったであろうと考えるのです。
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