改元の意義

 受命改制における手っ取り早い制度の改めは元号を変えることです。これは天子(君主)が変わり、代が変わったことを意識づけるために行われるもので、これを「代始改元(だいしかいげん)」と呼びます。即位の年の改元を「即位称元(そくいしょうげん)」、翌年の改元を「踰年称元(ゆねんしょうげん)」とも言います。日本でも皇位継承に限って、元号を変更することが1979年施行の元号法によって定められています。これは、天子(君主)が次々に変われば、元号も同時に改元されることを意味します。「令和」の改元は、代が変わることを国民に意識づける目的なので代始改元であり、また2019年4月1日の新元号発表、1か月後の5月1日改元は手続きとして即位称元であると言える改元でした。

 古くにはそれ以外にも、改元の理由がいくつかありました。

 1)代始改元・・・天子(君主)の交代を契機として元号を改めること。

 2)祥瑞改元・・・慶事、吉事を契機として元号を改めること。

 3)災異改元・・・不祥事、災禍による社会的悪影響を断ち切るために、改元すること。 

 4)革年改元・・・革命・革令・革運の3つを三革と言います。革命は辛酉革命を指し、革令は

   甲子(かっし)革令、革運は戊午(ぼご)革運をそれぞれ表します。これは、六十華甲子

   (六十干支)の中にある3つの紀年を表し、それぞれの年に至れば、社会を革新する

   動きが現われるという思想を背景とします。三革を区切りに元号を改めることを革年

   改元と言います。

 このように幾つかの理由から中国や日本では歴史的に数多くの改元が行われてきました。そして時を同じくして改暦も行われた訳です。なぜなら、改元や改暦以外に王朝(日本では朝廷、皇室)が国民に対し手っ取り早く、その権力や威厳、象徴的存在を印象づける方法はなかったからです。本来的には、国家の体制づくりや方向性の決定、社会基盤整備などが、まず率先して行なわれなければならないのですが、莫大な労力とお金、時間が必要となり、どうしても後回しにされてきたと言うのです。中国や日本では近代まで天子(君主)による時間の支配を誇示する方法としての「改元」や「暦法制定と頒布(はんぷ)」が定着していたのです。ただ、近代においては、改元と改暦が分離(元暦分離)されているため、天子(君主)による時間の支配という思想もありません。すでに完成をみている暦に対し新元号を載せると言う手続きに留まっている訳です。そして、直近の「令和」の改元においても、折角の改元作業でありながら、政教分離を理由として、改元を契機とする政治的な新しい取り組みは、一切示されず、記念的な新札の発券にとどまっていると言うのが現実です。

青川素丸 表参道の父

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