亀卜の道具と十天干
橋本增吉氏の説を検証する訳ではないが、果して「亀卜」という占い方の詳細を調べようとすると、なかなか関係書類や文献が巷に存在していないことがわかります。主には神道の儀式として語り継がれていますが、基本的には口伝を旨とするため文献が圧倒的に見つからないのです。そんな中、矢野憲一氏の《亀》には亀卜に用いた道具についての詳しい説明が載せられています。ここに引用させていただきましょう。
一、 亀甲一枚 :亀甲寸法定(さだむ)ることなし。大概長三尺ばかり、横二寸五分ばかり、亀の大小に随って作るべし。
一、小斧一柄 :切口一寸七八分、柄長一尺計。主に亀甲を切り裏をすく具。
一、甲堀一柄 :切口四分計 長五六寸。
一、小刀一柄 :兆竹を削り甲に筋を付ける。これら寸法は定りなく大概である。甲鑿(のみ)刀とも言う。
一、陶器一口 :口径三寸計 水を入れる土器で俗にテンホウという。
一、燧 一具 :燧石、火口、炭、火炉。卜う前に燧を切り火口(ほくち)に付けて炭に火をふきつけ火炉により火をこしらへ置く。
一、墨 一挺 :別に筆と紙も用意。卜文を書記するため。
一、兆竹一本 :長六寸計、幅四分計。時にのぞみ青竹にて新しく作る。サマシ竹とも言う。
一、 婆波迦木(ははかのき) 四五本:長五寸計、皮を付け長細く割る。
一、祝文一枚
亀卜に用いる亀甲は主にウカレ甲を用いると言われます。ウカレ甲とは海亀が死んだ後、甲羅だけが海辺へ浮いて寄ってきたものを指します。しかし、実際には、川や山にいる亀を殺して用いることもあったようです。但し、その場合は、亀を殺す日=庚申日と決められていて、また甲をつくる日も予め定められていたようです。さらに日本では甲をつくる仕様は小斧で甲を五角形にカットして用いたこともわかっています。拙者はこの五角形が、現在の祈祷木札や絵馬、お守り袋の五角形に踏襲されていると考えているのです。
この亀卜の道具は上記の10種があるのですが、その数と十天干との関係について思考を巡らしましたが、これという意味や形質の符合も見当たらず、ここに十天干の起源を求めるのは難しいという結論に拙者は至ったのです。
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