中国の革命思想

 《中国の革命思想》によれば、革命の語を熟して用いたのは易の六十四卦に始まると考察しています。小島氏の解釈は「およそ物は沈滞して動かなければ腐敗するけれど、これを変えた時には清浄になる。天地の自然現象の四時(春夏秋冬)の順序と同じく、一巡すればまた新しいモノと入れ替わり、さらに同様に、社会上でも時運が終始し変革が行われることが当然と言い、要するに新陳代謝の理法である」と言うのです。つまり、小島氏は、必然なる現象としての革命を認識しています。

 小島氏はさらに「革命という文字に拘泥する限り、革命という言葉はいわゆる易姓革命ということ、すなわち単に主権者が甲姓の者から乙姓の者に易るということを意味するだけのものと解されるが、しかし『易』というものの全体の構造の上から革卦のもつ意味を求めるなら、四時の推移が自然界における変革の一例であるがごとくに易姓革命ということも社会現象における変革の一例としてあげられたものとみるべきであり、統治者たる人物または王朝の更迭というだけでなく、政道が改まること、社会組織が変ることが当然同時に意味せられる。革命という文字の意義はどうであろうとも、革卦のもつ本来の意味を全面的に代表するものとして、今日の用法における政治革命および社会革命の全てをこれに包含せしめて理解することは、決して失当であるとは言えない」というのです。小島氏は直感的にこのように易の革卦こそが革命思想の根本原理であると説いており、正に拙者が先に論じた革の理法を拙者が論じる数十年前に感じ取っていたのです。
 実は、易の卦にはすべて陰陽思想、五行思想が包含されており、その根底には自然の秩序と社会の秩序が相応一致するという考え方もあります。換言すれば、天神合一の思想ですが、自然現象が不断の変化を繰り返すのと同様に、社会現象も常に循環していくものという考えに通じるのです。自然界も人間界も支配する法則は同じであり、故に人間界もまた自然界の法則に従うことによって、はじめてその秩序を維持することができるとされるのです。《中国の革命思想》の中で小島氏は、ここにこそ、中国古代思想における革命是認の思想が出て来る根拠があると言います。中国の歴史観を眺めれば、儒家、道家においても廃頽的な終末観を有していない訳ではないが、一方で古代に帰ろうとする考えが同時に存在していると言い、そのため、没落観に終わらず、循環説へと転化していく傾向を包蔵している。これこそが、中国の歴史観における最も普通で、かつ特徴的な点であると気づかされるのです。革命思想も実はこうした歴史観の上にある一つのプロセスと理解する必要がありそうです。

青川素丸 表参道の父

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