三革の本義
拙者は、これまで「三革」について様々な視点から論じてきましたが、一体その本義とは如何なるものでしょう。60年周期を一つの五行生滅の循環と考えた時、三革は正に金気に位置する時機を指し、それは次なる時代の芽(種)を育み形成する段階を意味するものでした。勿論、当該年に革命が起きたり、起こしたりすべき根拠は無いのですが、気の循環にうまく従うならば、「万事順を得て事成せる」道理から革命蜂起を目論む者にとって革命を正当化する根拠となり、また革命を起こす契機になったことは間違いありません。革命の気とは、正に金気なのです。金は「従革(じゅうかく)」の意です。この金気が巡る時機に、さらに金気の干支が相重なる年となれば、革命の意味が強められるのは当然の理です。
では、なぜ3つの革命チャンスの中で「辛酉」年だけがよく強調されてきたのでしょう。また「庚申」と「辛酉」はどちらも金気同士の干支の組み合わせですが、何が違うというのでしょうか?この初歩的な問題について解決しておかなければなりません。
実は金気の時期に当たる六十干支には、戊午、辛酉、甲子の他に己未、庚申、壬戌、癸亥があります。各々の卦は火地晋(かちしん)、坤為地(こんいち)、火天大有(かてんたいゆう)、地天泰(ちてんたい)が対応しますが、いずれの卦も「変化」という意味を持ってない卦です。つまり、時の革命家や為政者は、この干支の組み合せの中から最も都合良く、意味ある時機を選んだ可能性があります。例えば、先の「庚申」の坤為地に至っては陰の気で万事消極、衰運保守の象となり、革命を正当化するだけの説得力に乏しいのです。さらに言うと、地支の中でもパワーが強いとされる、四正神(しせいしん)(子、卯、午、酉)が3年間隔で巡ってくるので、これと天干との組み合せを考慮した可能性もあります。とりわけ午、酉、亥は、先の「五際」にも挙げられ、こうした意味的、思想的な部分でのシンクロニシティ(符合)が意識の底流にあるのかもしれません。
ちなみに、令和元年の2019年の干支は「己亥」です。水天需の卦が配され、金の気を持つ乾宮八卦に属します。実は2018年の干支も「戊戌」で乾為天(金)でした。このように考えれば、いずれでも良かったのでは?ということになりますが、《宗均注》では「三五、王者改代際会也」と言い、「戊戌」をもって改代の機と考えられています。代を改めるチャンスだと言うのです。しかし、水天需は「需して待つ」の姿勢です。待てば自ずと時機が来る象なのです。結果、2018年に改元を決定し、2019年に実施という、2年に跨った革がなされた訳です。実は、奇しくもというべきか60年前の1959年1月14日、明仁上皇の納采の儀が執り行われて婚約、続いて年干支の変わった4月に結婚の儀という、日本国にとっておめでたい出来事が重なりました。令和の改元もまたインパクトとしては等しく、2019年の5月に改元、翌2020年に東京五輪の開催とおめでたい出来事を連ねることになります。国民は気づいていないでしょうが、こうして過去に成功した干支を元に、暦にあやかり験を担ぐ風習は、今も近代国家レベルでも存在していると言うことです。尤も密かに皇室側の運気など計算されていることは容易に想像できるのです。
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