暦の発展の順序

 現在、私たちが使っている太陽暦は、元々太陽の運行を基に作った暦のはずですが、なぜ「月」という単位を用いて1年を12ヶ月に数えるのでしょうか?しかも、この12ヶ月が月の満ち欠けと全く一致しないという事実をどう考えるべきでしょうか?

 実は、このことは暦の発展の順序に関係しています。太古は照明器具が無かったので夜間は月明かりが頼りだったに違いありません。そして、この月の明るさを左右する満ち欠けもまた、人類の関心事だったはずです。月の満ち欠けの周期を太陰暦へ取り込むことによって、人類は夜間の活動範囲を管理できるようになったのです。この時、「月の朔望周期」と「暦の月単位」とは、ほぼ同義でありました。

 しかし、農耕文化が発達し始めると、暦に対し太陽周期との整合性が求められることになります。そうなると、太陽周期とそれまで用いてきた月の朔望周期の差をどのように計算すべきか方法を考えなければなりません。これが暦の方法論=暦法です。そして、このように太陰暦と太陽暦とをミックスした太陰太陽暦の発想が生まれます。勿論、太陰太陽暦を完成させるため、月と太陽の運行を正確に観測しなければなりません。果して、完璧ではないまでも素晴らしい近似を見せる方法論が確立され、太陰太陽暦が完成をみたのです。この時点でも、「月の朔望周期」と「暦の月単位」とは同じでした。ところが、後に太陽の運行こそが私たちの生活に最も合理な周期であることが人類の共通認識となり始め、月の朔望周期とは無関係な暦、太陽暦にとって替わったのです。このように考えれば、現在の12ヶ月の「月の単位」の考え方は、正に以前の太陰暦のなごり以外の何物でもありません。しかし、同時に「月の単位」は私たちの時間感覚を上手くとらえた使い勝手の良い、程よい長さの単位であることもまた事実なのです。



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